お猫様が救世主だった件につきまして





「あはははは!」

「笑い事じゃないんですけど」

お部屋で午後の勉強の最中、フラリとやって来たアレクに抗議したら、案の定爆笑された。


「まとわりつくお嬢様達をうまくあしらうのも、あんたの役割でしょうが!」

「いや、失敬。うん、それもそうだな」


わかったかわかってないんだか、まだ小さく肩を震わせて笑う憎たらしいヤツの足を、ギュッと踏んであげた。


「あ~らごめんなさい。足が滑ってしまって」


涙目になった王子様を、フフンと笑ってやった。


「おまえ……相変わらず可愛くない!」


いつもだったらそう言われたら、悪かったわね! と言い返してたのに。


今は、なぜか胸がズキッと痛んで言葉が喉に詰まって。何も言えなかった。


なんで……だろう。アレクに言われてすごく胸が痛い。


それでも、何も言わない訳にはいかなくて。


「すみませんね、可愛くなくて。あんた相手なら可愛くなる必要なんてないでしょう」

「…………」


あれ、とあたしはアレクの反応に戸惑う。いつもなら彼も何かぽんぽんと返してくるのに、急に黙ってしまって。


不安になったあたしは、様子を窺いながら彼を呼ぶ。


「アレク?」


ハッと彼が息を飲む気配がした。背中に何かが微かに触れた気がしたけど、何だったのだろう?


「いや……何でもない」


アレクは低い声で誤魔化した後、ボソッとあたしに話す。


「気をつけろ……帝国の動きが活発になっている。あまり外は出歩くなよ」

「……う、うん」

「わかったか? じゃな」


アレクはそれだけ告げてさっさと部屋から出ていったけど。結局、何をしに来たかがよくわからなかった。


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