お猫様が救世主だった件につきまして
ステルス帝国のプレイヤーは……ダメだ。遠すぎて見えない。
ただ、奇妙なことに全身黒つくめだと遠目にも解った。仮面までしてる?
相手のハンマーの動きを盗み見ようと思ってたけど。これじゃあ遠すぎて無理だわ。
長々と口上を述べてたヒース司祭長が、ようやく合図を送る。
「それでは、位置についてください」
受け取ったハンマーを持って、ぐっと握りしめる。
(頑張れ、あたし。自分を信じて! 大丈夫……やれる! みんなのために勝つ)
「それでは……はじめ!」
正午きっかり。ヒース司祭長の合図とともに、国境を賭けたもぐらたたきゲームのバトルが始まった。
開始直後――ほんの数十秒であたしは確信した。
(いける!)
特訓と練習を重ねたお陰か、アレクとのバトルのような凡ミスがない。実にリズミカルに、かつ的確にモンスターを叩いてポイントを稼いでいけた。
ランダムな動きはかなり気まぐれだけど、鍛え上げた反射神経と動体視力で確実にヒットさせる。
帝国のプレイヤーは、ハッキリ言って大したことがない。昨日対戦した実力者よりは上だけど、毛が生えた程度だ。
既に、58対29とポイントに差がついてる。
72対35。
86対40。
差は開く一方で気が抜けるけど、油断大敵と気を引き締めた。勝負は最後までわからないんだから。