お猫様が救世主だった件につきまして
国の勝敗と1人の命と?
「そんなの……選べないでしょう。状況にもよるけど、あたしはどちらも選びたい」
「おまえらしい答えだ。だが、帝国はそうでもないらしい」
椅子のひじ掛けに腕を置いたアレクは、天井を仰いでポツリと呟いた。
「技の発動のリスクは……肉体や精神へのダメージ。最悪命すら落とす。それでも帝国は邪道な技を使い続けてきた。つまり……帝国にとり、プレイヤー……国民などただの駒。あくまでも道具に過ぎない。そんな国に支配されればこの国がどうなるかなど、お前にも想像できるだろう」
「……!」
アレクの告白に、あたしは息を飲む。技を発動すれば……肉体や精神へのダメージがある。命すら落としかねないなんて。
そうしたら……もしかすると今日戦った帝国側のプレイヤーは……亡くなってるかもしれないの?
知らない人が命を落とすのも悲しいけど、実際に関わった人が亡くなるとなるとひしひしと実感が湧く。
それは、とてつもない悲しみと無力感。どうして止められなかったのかと自分を責める。
「命を落とす。そのリスクがあったから……アレクは技を使わないんだね」
「ああ。民は一人ひとりかけがえのない、代わりがきかない存在。勝つためとはいえ、国のために命を差し出せなど言えなかった」
甘いかもしれないがな……とアレクは呟くけど、あたし首を横に振る。
「ううん、それでこそアレクだよ。あたしこそごめんなさい……事情を知らないのに詰ったりして」
「いいや、わかったならいい。アンナが心配してたからな。強くなりたい気持ちはわかるが、もう技に頼るのはやめろ。な?」
項垂れるあたしの頭を、アレクはぽんぽんと叩いてくれたから。何だか嬉しくなって顔が緩む。
アレクにこうされるのが好きなんだなあって、自分でも不思議に思った。