お猫様が救世主だった件につきまして
そういえば、アレクにも言われてたっけ。帝国の動きが活発になってるから外に出るなって。
(でも……あと10日もないんだから……一秒だって惜しいよ)
あと10日であたしはこの世界と別れを告げる。最初からそう決めてた。
アレクへ頼むお礼は……日本への帰還。 それ以外は何もいらない。
……そう思ってたんだけど。
じわり、と熱いものが視界を覆う。だてメガネで変装してたから、拭くためにメガネを取ってゴシゴシと拭った。
ハッキリと自覚してきた気持ち……絶対、叶いっこない。
あたしは異世界の人間。たまたま巻き込まれてここにいるだけ。
だから、最初から望む資格すらないんだ。もう一度強く手のひらで目元を擦ると、メガネをかけようとして……途端に、首筋に鋭い痛みを感じた。
(な……なに?)
ぐらりと視界が揺れて、目の前に黒づくめの人間がいるのを見た。逃げようとしたけど、体から力が抜けて動けず声も出ない。
(たすけて……)
あたしは、ただひたすらその名前を出ない声で呼んだ。
(たすけて……アレク)