お猫様が救世主だった件につきまして
あたしが帝国に拐われかけたということは極秘にされたけど、たちまち人びとの知ることになって。国民の帝国への怒りが高まっていった。
「まったく、なんて卑怯な! 正々堂々と勝負した末の結果というのに、サクラ様を誘拐しようとするなど」
パティさんの怒りもすさまじい。あらゆる罵詈雑言を並べ立て、大人しい彼女のイメージがすっかり変わった。
「あの……あたしは無事だったのだから、そんなに怒らなくても」
「いいえ! 到底許せるものではありません。わたくしがプレイヤーならば、やつらをけちょんけちょんのコテンパン。二度と立ち上がれぬよう徹底的にやっつけてやりますわ!」
拳を振り上げ鼻息も荒く叫ぶパティさん……もう、何も言うまい。
そんな中で、ドアがノックされてパティさんが応じると。現れたのはアレクだった。傍らにはなぜかアンナさんがいる。
「すこし、話がある。大丈夫か?」
「あ、うん……十分休ませてもらったから」
「本当か? 無理はするなよ」
アレクはあたしの額の前髪をかきあげ、指先で熱を診てる? ジッと彼を見てると、フッと微笑まれて――頬が熱くなる。
「顔が赤いぞ? やはり熱があるんじゃないのか」
「だ、大丈夫……これは……その」
「ん? 熱でなければなぜ顔が赤い? サクラ、答えてみろ」
両手で頬を包まれて、余計に顔の熱が上がる。
絶対、わかってて言ってる!
「あ、アレクのいじわる……」
「ん? 意地悪とは心外だな。俺はおまえを心配して」