お猫様が救世主だった件につきまして
「うおっほん!」
パティさんのわざとらしい咳払いで、やっとアレクは離してくれたけど。クックッと肩を揺らしてた。本当に、質が悪い!
「帝国からバトルの申し入れがあった」
「え?」
まだ1週間かそこらなのに? と不思議に思うと、アレクはこう告げる。
「要求は……もとは帝国民の血筋であるおまえの身柄の返還だ」
「えっ!?」
あたしは意味がわからずに、何度も目をまたたく。帝国民の血って……どういうこと?
「そんなの……あり得ないでしょう。だって、あたしは……お父さんもお母さんも、れっきとした日本人だよ。母子手帳だってへその緒だってあるし」
「……リヒト」
突然、アンナさんがひとつの言葉を口にする。リヒト……利人。あたしをかわいがってくれたおじいちゃんの名前だ。
「それは父方のおじいちゃんの名前です。でも、どうしてアンナさんが知ってるのですか?」
あたしが訊ねると、アンナさんはピクリと目元を動かしアレクを見た。彼はアンナさんを促すように頷く。
そして……数巡の後、アンナさんは観念したように息を細く吐いた。