お猫様が救世主だった件につきまして
「利人……リヒトは……昔、わたくしの恋人でした」
「えっ……」
アンナさんの告白はものすごく衝撃的で、あたしは頭が真っ白になる。
物心ついた時から、おじいちゃんは一人だった。いつもいつも……遠くを見ては“あの世で会うのが楽しみだ”と話してた。
今会えないの? と聞いたら、無理だよって。飛行機でも電車でもいけない遠いところにいるんだよ……と寂しそうに話してくれた。
よもやおじいちゃんの想い人がアンナさんだったなんて。
そこで、あたしはひとつの可能性に思い至った。2人が恋人でおじいちゃんは一人だった。なら……。
「アンナさんは……あたしのおばあちゃんなんですか?」
一度も会ったことがないおばあちゃん。そんなに恋しい人に会ってみたいと幼心に思った。
期待しながらドキドキと待っていると……
アンナさんは寂しそうに微笑み、首を横に振った。
「いいえ……あの方とはあくまでもプラトニックでした。わたくしが出家を決めてましたから……でも。あの方は帝国の民でいながらに、わたくしの暮らす国を守ろうとしてくださいました」