お猫様が救世主だった件につきまして
「うん、わかってるよ」
あたしが躊躇いなく頷くと、アレクがいきり立つのが解る。彼は、あたしを思って怒ってくれてる。それだけで十分だった。
「だったら、なぜ!」
「……教えない」
あたしはアレクに背を向けると、はぐらかすように笑い声を上げた。
アレク、あたしね。きっとあなたのことが好き。
でも、教えない。
だって、悔しいもん。
あなたはいつか王様になって、相応しいお妃様と結婚しちゃうんだから。
あたしの初恋は、ここに置いてく。
アレクとともに、さよならするって決めたから。
「そんな不安そうな顔をしないで。アレク……大丈夫だから」
あたしは揺れる瞳のアレクに微笑んで見せる。 その手元には……技について書かれた唯一の本があった。