妖しの姫と天才剣士
……でも。
嫌いだったらあんな事までするの?
口付けなんて、嫌いな人に。
ああ、でもそうか。嫌いだったからこそ私の事を避けてたかもしれない。
「もういい。寝る」
ああ。嫌な事まで思い出してきた。
触れた唇の温度なんて忘れてしまえ〜っ!
考えが逸れすぎて大変。
私はその場所で横になった。
畳は少々冷たい。
……強情な奴なんて知らない。
総司の言う事なんて聞いてやるもんか。
些細な嫌がらせ。
と、こんな風に意地張るのも久しぶりな気がした。
小さい時以来かな?
ここに来てから、最近の内に私は変わった気がする。
凍っていた、凍らせていた心を溶かされて、本当の私が出てくる様な。
……可笑しな話か。
私が本当の私を知らないなんて。
本当に可笑しくなって丸くなりながら笑っていると。
「ほぇっ?」
グイッと腕を引っ張られた。