妖しの姫と天才剣士
逃走《沖田side》
「ふふっ。茅野ちゃん、寝るの早いね」
まぁ、茅野ちゃんは僕の方が先に寝たと思ったみたいだけど。
寝たふりだったり。
寝れる訳ないじゃんか。こんなに近くに君がいるのにさ。
長い髪を珍しく下ろした茅野ちゃんの髪に触れる。
するすると滑り落ちる感覚。
何だかやみつきになりそう。
「…………ん…………」
心地よさげに寝ている顔。
普段の険しい顔とは全く違って可愛い。
「そ……じ……」
ふぇ?
な、何で僕の名前を?
声に出すのは防げたけど、顔がおかしなことになってるだろうな。
茅野ちゃんが寝ててよかった。
「ごう……じょう……すぎ……。さむ、い…………ら」
「…………くすっ」
それは僕に対する愚痴。
苦笑が溢れる。
寝ててもまだそれ引きずってるの?
何度言っても聞かなかったこと。
だって仕方が無いじゃないか。
この距離で一緒に寝るなんてどんな試練だよって。
土方さんが諮った事だけは分かる。