妖しの姫と天才剣士
「あの人も酷いよなぁ。僕の事分かってる癖に」
面と向かって言われた事は無いけどさ。
あの顔といい、茅野ちゃんと合わせようとする所といい。
良い迷惑だよ。
ほんとに、良い迷惑。
白髪の男。
彼が茅野ちゃんの何を知っているか分からない。
ただそれを茅野ちゃんが欲しがっている事だけは確実で。
その為に隊則まで破るなんて、どういうこと?
必死に隠そうとはしてたけど僕にはバレバレ。
茅野ちゃんはあのまま屯所から逃げるつもりだって。
答えは後、三日で分かる。
茅野ちゃんと居られるのもそれで最後かも知れない。
それでも。
この手を離したくないと思う。
僕のちょっとした我儘。
こう言うのを嫉妬っていうのかな。
彼には絶対に渡したくない。
「ねぇ、沙雪。君は…………」
聞こえてないから沙雪って呼び捨てに出来る。
やっぱり僕って意気地なしだなぁ。
どうするの、かな。
このまま僕たちと決別する道を選ぶ?
「僕は……君と一緒に居たい。できれば、ずっと……」
叶わないと分かりきっている願いをする辺りが馬鹿だな。