妖しの姫と天才剣士



全ての脅威が消え去って、辺りには静寂が流れる。


この沈黙は痛い。苦しかった。



「……戻るぞ」

「はい」



その静寂を破った土方さんの言葉に返事をすると私は肩から力を抜いた。


落ち着いた瞬間、思い出した恐怖の記憶。


震えている手を必死に握って総司達から隠す。



「……ねぇ土方さん。先に戻ってて貰えませんか?」






どうしたんだろ?



「はぁ、いや分かったよ。……ったく良い加減けじめつけろっての」



私には分からないけど土方さんには総司の意図が分かったらしい。



「ハハハ」



突っ込まれた総司は乾いた笑い声を上げた。



「ちゃんと戻ってこいよ」

「分かってますって」



刀を収めた土方さんは暗闇を一人で帰って行った。


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