妖しの姫と天才剣士



「どうしたの? 総司」

「いや〜。茅野ちゃんが落ち着きたそうだったから」

「…………そんなこと………………」



落ち着きたい。それは少し違う気がした。


怖さをどうにかしたい。


その為に強くありたい。




じゃあ。



強くある為に、私は何をすれば良いの?


初めて抱いた疑問。


生きるために強くあろうとした私。


でも、その目的が揺るぎ始めているのを今ならはっきりと理解できる。



「強さって……何なのかなぁ」



呟いた私。



「うーん。強さ、ねぇー」



素直に考えてくれる総司は優しいな。


私の為に考えてくれてるのがとても嬉しい。


って、なに考えてるんだろ⁉︎ 私⁉︎



「強さは弱さ」

「え?」

「いや、そんな事聞いた事あるなぁ〜って。強いのは弱さを知っている事。

本当に強いのはそんな人じゃないのかなぁ〜?

弱い人こそ自分は強い、強いって信じ込ませて見せびらかすから。

そういう奴ほど早く死ぬ。

弱いことを知らないと引き際も見極めれないし、驕っていると誰かを守ることもしなくなる」



能ある鷹は爪を隠すって言うしね〜、って総司が言う。


その言葉はストンと私の胸に落ちてきて。



「まぁ、僕も人の事は言えないけど。強いよ? って自分で言うし」

「ありがと、総司」

「ん」

「じゃあ戻ろっか」



歩き出した私の手を総司は握る。



「ふぇ⁉︎」

「もう、離さないから。絶対に」



真剣な総司の声。


その手は少しだけ角張っているけど、温かさがあって。


私はその手を黙って握り返した。


< 129 / 307 >

この作品をシェア

pagetop