妖しの姫と天才剣士
「正々堂々と戦える訳? 君が。
……そんなこと、絶対しないよね」
「ハハッ! やっぱ分かってるね! だからこそ……やり難いや」
そこで取り出した呪符。
それが消え去ると同時に由羅の姿もかき消えていた。
ど、どこ?
「つ〜かまえた」
「っ⁉︎」
何これ。
私は由羅の腕の中に囚われていた。
「ねぇ君の血、チョーダイ?」
口の中から覗いているのは牙?
それが首筋に突き立てられた。
痛ぅ!
「や、やめっ!」
どれだけ必死に踠いても拘束は解かれない。
血を舐められてそれを飲む音すら聞こえてくる。
ゾワゾワと悪寒が走った。
い、嫌、嫌っ!
這う唇の動きも、首筋にかかる由羅の息も全部嫌だ。
涙が伝うのも隠せない。
音を立てて離された唇には新しい血が。
私の血だ。
私の血が由羅に付いてると思うだけで耐えられない。
涙まで舌で掬われて私の自尊心はズタズタ。
拘束を解かれるとその場にへたり込んだ。
「ごちそーさま。やっぱり別格だねぇ、姫の血は。
妖共が欲しがるものわかるや。
でも、ただの処女《おとめ》ってだけ?」