妖しの姫と天才剣士
「良かった」
ふにゃりと顔を歪ませた茅野ちゃんの目には光るものが。
「ん?」
「良かった……っ。総司が、ちゃんと勝ってくれて。
わ、私の所為で負けるかと……っ」
ポタポタと涙を零し出した茅野ちゃんに僕は瞠目する。
そんな心配まで掛けちゃってたの?
それより君の方が苦しかった、辛かった筈だ。
首筋に口付けられ、呪符で傷つけられ、挙句刺されまでしたのに。
俺の……僕の心配してたの?
僕はそっと茅野ちゃんの背中に手を回した。
近くに土方さんたちがいるのは分かってるけどさ。
ちょっとだけわざとだったり。
これ見よがしによしよしと茅野ちゃんの背中を撫でた。
しばらくの間なりを潜めていた一くんと山崎くんも出てくる。
「おい。イチャついてるのは良いが、さっさと帰らねぇと怪し––––」
土方さんに呆れた声で注意された時、突如頭上から大きな拍手が降ってきた。