妖しの姫と天才剣士

襲撃




「まさかあれ程簡単に由羅がたおされるとは思って無かったよ。

『流石』と賛辞を送っておこう。

優秀な由羅という肉体を失ってしまうとは」



結界の外から現れたのは黒髪の青年。


その隣には彼と同じ黒髪の少女が居た。


由羅という肉体。


その言い方が引っかかって仕方ない。


肉体って。人に対して使う言葉? その言い方だとまるでモノの様じゃないか。


総司は私を腕の中に抱え込むと剣先を彼へと向けた。


まだ座り込んだままだけど。


私、立てるからっ!


離してほしい。恥ずかしすぎる。



「君は彼の仲間? 由羅……って言うのかな?」

「仲間……その言い方はちょっと違うかな」

「はい?」



仲間ではない?


少しだけ思案する表情を浮かべた彼。



「由羅は僕で僕は由羅。

僕の一部にして、僕の全部だ。

こういうのを何と言うのか––––その答えを僕は持ち合わせて居ないんだ。

それを仲間と君たちは言うのかな?」



演説をするように身振り手振りを入れながら彼はそう語る。


何を言いたいんだ。


謎々のような言い回しで何を伝えたいのかが分からない。


それに、疑問に疑問で返すって。



「……君はそっちを選んだみたいだね。姫様」

「そ」

「そうだよ。彼女は渡さない」



ぎゅと更に抱き締められた。


あ〜。赤くなる顔が恨めしい。



「それが幸か不幸かなんて僕に判断する術はない。

それが後悔を生まないように精々努力すれば良い」

「……後悔なんてしない」


何で私の事を分かったかのような口振りをするの。


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