妖しの姫と天才剣士
迷走
そのまましばらく歩き続けてみたものの……
ん? というか、ここどこだ?
周りを見回してもさっぱり分からない。
まさか……迷った?
いや、でも京の町に来てから迷った事なんて一度もない。
方向を把握するのは苦手じゃない。
けど、今日の私は自分でも分かるくらいおかしかったしなぁ……。
周りの事なんて一切気にせずに歩いてたし。
「どうしよ……か」
今の居場所が分からないと帰り道も分からないんだな。
京の町がいくら碁盤の目の様になっていても。
あんまり遅いと土方さんに怒鳴られるだけじゃすまなくなる。
総司たちの見回りも終わっているだろうし、暗いから島原には程遠そう。
さて、どうやって帰ろうか。
重い溜息を吐きながら歩いていると。
「新選組の奴らは––––––––」
そんな声が聞こえて、足を止めざるを得ない。