妖しの姫と天才剣士
新選組が何。
もっと聞き耳をたてようと家屋に隠れながらその声の主を見つけようとすると。
「––––––––ッ⁉︎」
は?
月の光に照らされた浪士たちの姿は人の姿からはかけ離れていた。
耳じゃなく、魚のエラの様になったもの。
指の間には水掻きの膜がついていて。
その姿はあの時と同じ。芹沢さんと襲われたあの時と––––!
という事は、長州と繋がっている可能性が高い。
早く、早く屯所に戻って土方さんたちに伝えないと。
思考だけが急いて、体がついて行けてない。
ようやく足を引いた瞬間、ガラガラっと音を立てて何かが倒れた。
そっちを見ると積まれていた桶が転がっている。
相当の音が静かな街並みに響いた。
「……げ」
やばい、今見つかったらただじゃすまない!
「……! おい、誰かに見られたぞ! 追え!」