妖しの姫と天才剣士
「くっ……」
雨足は更に強くなる。
そのお陰で血の匂いは薄れているけど、早くなる動悸が苦しい。
喉が渇く。
このままここに居ると危ないな。
重くなった体を引きずりながら路地に入り込む。
今度は打ちあわせるなんてあり得ない。いつもの私なら良いけど、今は駄目だ。
こんな日に限って調子悪いなんて。
フラフラして、注意力散漫になっていたのが悪い。
「あっ……」
足を滑らせて川に落ちた。
バシャン! と大きな音を立てたと思った時にはびしょ濡れ。
更にびしょびしょになるし、着地に失敗した。
足、捻ったかも。
ズキズキする。
上に上がるのも億劫になってそのまま川を渡った。
でも、渡りきった途端本当の本当に体が全く動いてくれない。
橋の下までは動けたんだけど。
壁に寄りかかって、ほんの少しだけ休もうと思っても一度止まったら何も出来なくなってしまった。
雨音がうるさい。
痛い、頭が。更に響く痛みは冷静に考えようとする思考を奪う。
早く、動かないと。追いつかれたらもうどうしようもなくなる。
あれ? 暑い、なのに寒い。水に濡れ過ぎたかな。
『血が……欲シい……』
内から漏れ出てくる声が抑えられない。