妖しの姫と天才剣士
疾走
「山南さん、それはどこですか」
早く、早く行かないと。総司の所に!
「それを知ってどうするつもりですか?」
山南さんの眼鏡がキラリと光る。多分予想できているんだと思う。
私の聞いた理由が。
「総司たちの所に行きます。行かせてください!」
「駄目です。……全く、沖田くんが言った通りじゃないですか。
君の体調は万全ではありません。そんな君を送り出す事は……無理です」
山南さんの言いたいことも分かる。
でも、私の事なんかより総司の事が大事なの!
「お願いします。行かせてください」
「茅野くん…………」
私は深く頭を下げた。
お願いします、山南さん。今行かないと絶対に後悔します。
例え、死ぬ事になったとしても。
私は総司の側に行きたいんです。
私も山南さんも言葉を発せないまま動けずにいると。
「––––––失礼します」
その声と共に障子が開けられた。