妖しの姫と天才剣士



「あ、あの、沖田さん!」



ハッとなった彼が顔を上げると困ったような笑みを浮かべた。



「ああ、ごめん。茅野ちゃん」

「あの人は誰ですか?」



一瞬だけ目を瞬かせた沖田さんは下を向いて呟いた。



「芹沢さん。……芹沢鴨、だよ。新撰組、局長だ」

「局長? 局長って近藤さんだけじゃ……ないんだ」


誰ももう一人局長がいるなんてこと言わなかった。


あの土方さんでさえ。


近藤さんが長なんだと思ってたからそれがちょっと意外だった。



「それがもう一人居るんだよねぇ〜。残念な事に」


悲しそうな、それでいて悔しそうに笑む沖田さんに私はそれ以上何も言えなかった。



「消えちゃえば、いいのに」


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