妖しの姫と天才剣士
『やっぱり君は僕に似ている。ライたちを通して見る限りはそんなにも思わなかったのに』
雷狼さん? それに私に似ている人というのはまさか。
あなたが美琴さんなんですね。
そう言うと返事は返ってこなかった。でも、ふっと笑いを零したのが分かる。
やっぱりそうなんだ。
だったら、尚更こう思う。
早く、早く現実世界に帰してください!
私は総司を助けなくちゃいけない。
総司と離れたくない。
そのためには早く元の場所に戻らないといけない。
ここにはない刀を握るように右手に力を込める。
『ごめんね。沙雪ちゃん。それはできないんだ』
え?
『今から君には僕と同じところにまで堕ちてもらう。
人を愛したことを悔やんで、
そして人を憎むようになるまで徹底的にね?』
そうすればきっと楽になるよ、と囁かれた瞬間。
色のなかった世界が歪み始めた。