妖しの姫と天才剣士



次に飛び込んできたのは真っ赤に燃える村。


たくさんの死体が転がっていて、その姿は見るのも憚れるものがほとんどだった。


獣で噛み殺されたようなものがほとんどで、体の一部分しかないようなものも多々ある。



『お願いだ! 君たちだけでも逃げて!』



一人の男の人が剣を構えながら親子を庇うように妖の前に立ちはだかっていた。



『いやよ! あなたを置いてだなんて……!』

『お前がいなくてどうやって沙雪は生きていくんだ!』



さ、ゆ、き?


よくよく見ると二人の顔は私に似ている。


逆だ、私の顔が二人に似ているんだ。


と、いうことは。



お父さんとお母さん?



まだ小さい私にいつも使っている刀を握らせたお母さんは目に涙を浮かべながら私の顔を覗き込んだ。



『ごめんね、沙雪』



走り出したお母さん。



ああ、この結末はわかってしまった。


これが、私の記憶の最初の部分へと繋がっている!



『愚かな選択をしたな。お前たちのせいでこの村は滅んだのだ』



折り重なったお母さんたちを見下ろしているのは、ニンゲン?



あ、アアアアアアアッ!



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