妖しの姫と天才剣士
ここを通す訳には行かない。後ろには総司がいるし、それに……。
この妖狐は私の血の匂いに反応してやって来た。
こいつが此処に来たのは私のせいなんだ。
……だから、私が片をつけないと。
せめて、下の皆が私たちのことに目を配れる余裕が出来るまでは。
駆けてくる妖狐を転がるようにして避け、突き出した牙を刀で受ける。
なのに。
牙を折った妖狐なのにその牙もすぐに生え変わった。
「なんて再生能力だよ……」
『シャァーッ!』
全身の毛を逆立てた妖狐。
不味い、これは避けきれなーーーー!
飛び乗られた私は思いっきり畳に背中を叩きつけられた。
「っ、がぁ!」
空気が一気に吐き出さされて、息が一瞬止まる。
『ガヴッ!』
っ!
突き刺されそうになった牙を左手を盾にして防ぐ。
着物も、防具も最も簡単に突き破った妖狐の、牙。
ブチッ、と皮膚が破ける嫌な音。
酷く食い込んだ牙は抜ける素振りも見せない。
落ちてきた血が私の半顔に降り注いだ。
今……なら!
殺れる。こいつを!
右手に持った刀を妖狐に突き刺す。
柄まで沈みそうな程突き刺すと妖狐は体を霧散させた。