妖しの姫と天才剣士



「お前も目覚ましたんだな。茅野」

「は……はい。おかげさまでなんとか」



やっと……というかできれば話しかけてくれない方が良かったな土方さん。



「あの後大変だったんだぞ? テメェはぶっ倒れるし、奥の座敷に総司は倒れてやがるし、妖も溢れてきやがるし」



段々と黒い雰囲気を纏い出した土方さん。若干逆鱗に触れた。


でも、これって私のせいじゃない。土方さんが勝手にいいだしたことだから私のせいじゃない……はず。



「平助も額割られ、新八まで斬られるんだからたまったもんじゃねぇ」

「藤堂くんたちもですか!?」



まさか死んじゃったわけじゃ。


そんな私の心の声が漏れ出ていたのか土方さんは苦笑いを浮かべながらこう言った。



「安心しろ、茅野。二人とも元気だよ。……平助は……ちょっと、な」



土方さんはやけに顰めっ面をしている。


というか、必死に笑いを堪えようとしてる––––?



「ププッ、確かに、あの姿は……ははっっ!」

「そ、総司! わ、笑うんじゃねぇっ……ックク」



二人とも小刻みに震えだした。


失礼すぎません? 平助くんに。


そういえば、その二人は一階を担当していたような。


だったら、一階にいた近藤さんは?


無事?



「くくっ、安心しろ茅野。近藤さんはピンピンしてるよ。

それに、お上に認めて貰えたと喜んでた」



ほっ。


まぁ、近藤さんの事だから無事だろうとは思ってたけど。


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