妖しの姫と天才剣士



「とりあえず、伝えたいことは伝えた。茅野はほとんど聞いてねぇだろから総司の口から伝えとけ。

分かったな」

「分かってますよ〜だ。平助達じゃあるまいし」



ちょっと拗ねてる総司。その様子を見た土方さんは少し笑ってる?


いつもの小馬鹿にしたような笑みでもなく、無理に作ったわけでもなさそうな自然な笑み。


土方さんもちゃんと笑えるんだ。


その様子を私に見られたと気付いた土方さんはすっと笑みを潜めていつもよりさらに仏頂面になった。



「テメェら二人ともしばらくは療養だ。前線に出ることは許さん。いいな!」



バタンッ!



わざとらしく固苦しく言っているのにさえ笑みがこみ上げてくる。


視線を上げると少し怒った総司の顔。


どうしたの? と声を上げる暇もなく抱きしめられ、口を塞がれる。


角度を変えてなんども重なる唇に最初はびっくりしたまま目を開いていた私。


でも、何が起こったのか理解できるとそっと目を閉じた。


総司のすべてを受け入れるように。


そして、私は総司の背中に手をまわす。



今まで離れていた分を埋めるように、


触れ合っていなかった心を通わせるように、


私と総司はいつまでもそうしていた。


その部分から温かい熱が巡っていく感覚が心地よくて


私は総司に体を預けた。


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