妖しの姫と天才剣士


「おい、茅野」

「はい?」

「お前、女だよな」


…………。


何だか失礼な事を言われた気がするのは気のせいだっただろうか。



「……そうですけど」



少し、キレ気味に言った。


なんだよ、急に。女だよなって確認の仕方!



「なら、お前に一つ任務を与えよう」



その言葉で背筋が伸びる。


まさか、こんなすぐに任務を与えられるなんて。


信用……された訳じゃないだろうな。


人手がないだけだ。


そうに違いない。


でも、何故私に? 内情を知っているから?


幹部だと顔が割れているから?



「お前に潜入捜査を命じる。内容は新撰組局長、芹沢鴨の身辺調査だ。

おかしな事をするようならすぐに知らせろ」



馬鹿げた話だと思った。


同じ新撰組の人間が新撰組の人間を監視するなんて。


けど、そう言った土方さんの瞳には真っ直ぐな決心の色がにじんでいて。


黙って頷くとこしかできなかった。


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