妖しの姫と天才剣士
「これがいいかしら」
私が芸妓さんの部屋に入った途端騒然としたかと思うと四半刻も経たない間に着せ替え人形状態だ。
人生の中で一度も身につけたことのないような豪華な着物や簪。
濃紺の袴を脱がされるとそのあとは着せては脱がし、着せては脱がしの繰り返し。
着物は藤の装飾が施され、これでもかと襟元が開かれている。
……胸元がスースーするって違和感だ。
と言うか、こんな格好して総司怒らないかな……。
不安になってきたぞ。
着付けだけでもでもどっと疲れたというのに化粧やつけ毛をされて散々だ。
こんな私が丁寧に白粉を塗って、紅をつけても見た目なんか良くなるはずもない。
がっかりさせるだけだという事実が私の気をさらに重くさせた。
ここにいる人は今は暇な人らしくこんな私にずっと構っていた。
時折入れ替わりはしているけど、全員が私に気がつくと興味津々に近づいてくる。
も、もう……勘弁してくれよ……。
飾り立てても変わらないでしょう!