妖しの姫と天才剣士
ガチャンと危うく膳を倒しそうになったが、なんとか堪える。
抱きついてきたさゆは上目遣いで見つめてくる。
……なんというか……いつもより妖艶さが増している気がする。
いつもは男勝りで、妖艶さなど微塵も感じさせないのになぜだ。
そりゃあ、女の顔をみせるときは可愛くて仕方ないが。
化粧を施しているせいで大人びて見えるというのに表情があどけない。
その差がなんとも言えなかった。
「総司?」
潤んだ瞳で見つめられるとなんだか……。
視線を逸らすとその顔を両手で包まれる。
「どうしたの? 総司」
柔らかく笑ったさゆにもう我慢できそうになかった。
「土方さん」
「な、なんだ……」
「もう、お暇していいですか」
ギュッとさゆを抱きしめると土方さんに笑む。
「夜風に当たって来まぁ〜す」
「お、おいっ。総司!」
「あらあら、総司はん? それに、茅野はんも……」
僕はさゆを抱き上げると隣の部屋へと逃げ込んだ。
襖を閉めるとそこにはまた眠ったさゆと二人だけ。
「はぁ〜」