妖しの姫と天才剣士
数日経って、分かった事。
毎日のように酒宴が開かれていて、真昼間でも関係ないようだ。
酔っ払った声に、酒臭い匂い。
庭先を掃除している私にすらその声は聞こえてくる。
「あら〜小雪はん。今日も掃除やってはるの〜?」
「お梅さん。はい、この仕事好きなもので」
「小雪はんも変わっとるんどすね〜」
にっこりと笑いを返した先にはお梅さんが。
お酒を結構飲んでいるらしく紅潮した顔にフラフラとした足取り。
大丈夫だろうか?
そんな私の心配をよそにクスクス笑ってお梅さんはこの場を去った。
お梅さんは芹沢さんの妾。
元は菱屋の主人の妾だったらしいけどよく知らない。
「––––––––とご報告は以上です」
「相変わらずだな。まぁ、ありがとう。芹沢たちに勘付かれないように早く戻れ」
全身黒の袴を身につけた私は土方さんの命通りに毎夜報告に来ていた。
土方さんとは障子越しの会話。それだけで十分だった。
「分かりました」
それ以上は関わらない。
町の中ですれ違っても見て見ぬ振りだ。