妖しの姫と天才剣士
そんな疑問は残ったまま庭に辿り着いた。
「あら? 小雪さん。こんな時間にどうしたの?」
ギクッ!
振り返るとそこには襦袢姿の奥様が。
絶対怪しまれてるよね。全身黒だし、男装だし。
「奥様……。少し、夜風に当たりたくてフラフラと」
「最近京の夜は危ないから……不用心に出歩かない事よ?
いくら新選組の皆さんが見回りをしているからといって……」
「心得ておきます」
良かった。私の格好には触れてくれないみたい。
私が新選組の隊士だなんて気がつかないよね。
忠告ありがとうございます。
でも、自分の身は自分で守ります。
「早く寝ましょうか」
「はい」
そう言ったものの、部屋に戻るとすぐに屋根裏へと入る。
腹ばいになりながら芹沢さんの部屋を覗き込んだ。
それがもう毎日の日課になってしまっている。
戻って来たら屋根裏に戻って、芹沢さんの部屋を覗く。
あまり見たくない光景が広がっている時もあるけれど。