妖しの姫と天才剣士
《沖田side》



「は……?」



急に倒れた……?



「どう言う……事だ?」

「し、知らないから! 僕が聞きたいくらいだし!」



近づいてきた一くんに思わず叫ぶ。


叫んだって変わらないけど。


僕は恐る恐る『彼』に近づく。


息はしているようでとりあえず一安心。



「どうするんだ? 総司」

「うん……このままにしておくのはどうかと思うんだよね。

また妖に襲われかねない」



いつもは気にしないのに彼だけはやけに気にかかる。



「屯所にまで連れていくか?」

「う……土方さんにどやされるかもね」



別に土方さんに怒られる事が怖い訳では
ないけどさ。


なんというか〜……。


うん、面倒!


あの人、説教し出すと長いからなぁ〜。



「しかし、この者を連れて行くにはそれなりの理由が必要だぞ」



その言葉で、良い事を思い付く。


これならきっと怒られないと思う理由だ。



「だがそんなモノある訳ないか……」

「あるよ」

「……どう言う事だ?」

「彼には妖が見える。……理由は不十分かな?」



沈黙を続け、顎に手をやる一くん。


でも、彼に結論は決まっている筈だよね。


貴重な人材は必要だ。人員には満足してないわけだし。



「良いだろう。このままここに置いててもきっと近藤さんに怒られるだろうからな。

副長も近藤さんに言われれば何も言えない」

「よし、じゃあ決まりね」



僕は刀を納めて、彼の体を背負う。


意外に軽くてびっくり。食べてるのかな?


それに女みたいに細い体つき。


これで刀振るえるの?



一くんは僕の先を歩いていく。


ふと振り返るとあまりにも季節外れ過ぎる桜。


その花を綺麗に散らせている。



「綺麗。だね」



場違い過ぎる位に。


なぁ〜んて、僕らしくないな。


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