妖しの姫と天才剣士
「で、茅野ちゃんは何で戻って来たの? 任務……が終わった訳じゃないよね」
「うん。私、土方さんに報告したい事があったから」
そこで、私は昨夜見た事を全部話した。
「……芹沢さん……」
「こう言う事ってあるの? あれは、もう……妖だよ?」
「うん、そうだね。僕たちの仕事は町に蔓延る妖を斬る事も目的なのに。
その斬る側が妖だなんて……」
「そ、うなの?」
「今更? だからこそ、『見える』人材を探してるんじゃないか」
そう、なんだ。
でも最初に会った時もそんなこと言ってたっけ。
「…………まぁ、僕たちも人の事は言えないけどね」
「どう言う事?」
総司の言う意味が分からない。
人の事は言えないって。
「僕たちも人間離れしちゃった的な〜〜」
「何だよ、それ」
意味がわからない。
その剣術がすでに人間離れしてるのに。
「いいよ……忘れてっ……。どうせ、このままだったらその内分かる」
のけ者にされていることがなんだかとても悲しくてすねる。
「妖を憑かせてるなんて、人間辞めてると思わない?」
総司は何かを呟いた。
けど、その言葉は私の耳まで届かなかった。
ただ、何となく。それはとても重要な事だった気がする。
聞き逃したことを後悔するくらいには。