妖しの姫と天才剣士
「何だろうな、芹沢たちが今更……」
「さぁな。知りたくもねぇよ」
あいつらの考えてることなんざ。
ドタドタと廊下を歩いて来るのが分かる。
ああ。やっぱり来やがった。
目的はこの場所だな。
「おお、土方も居たのか」
「……お久しぶりです……。芹沢さん」
不機嫌な声音だったが、そんな事気にもしてない様子なのがイラってくる。
後ろのしけたツラした新見も気にいらねぇ。
「そう言えば、世話になってるな」
「は?」
何のこと言ってやがる。
「小雪の事だ。お梅が気に入っててなぁ!」
小雪…………。
ああ、茅野の事か。
そう言えば、俺の親戚って事にしてたんだっけ。
それが、一番理由として通しやすいと思ったからだったが、自分でも忘れてたぜ。
「それなら良かったですよ」
上手く潜入出来ているみたいで。
間者だとはまだ気づかれてねぇみたいだな。
それに、監視対象の芹沢に近いお梅に気に入られてんだったら都合がいいさ。
…………でも、あいつに愛想なんて振り撒けると思えねぇがな。
性格本気で男だと思うのにな。