妖しの姫と天才剣士
彼の後ろをついて行くとついたのはある部屋だった。
「失礼しますよ。近藤さん」
「ああ。入ってくれ」
その部屋の中には二人の男性が。
どっちも見た事はない。
少なくとも、昨日見た彼の片割れではなさそうだ。
「で、総司。こいつが昨日拾ってきた奴か? 」
「失礼だなぁ〜土方さん。拾ってきたとは」
土方さんと呼ばれた彼の顔は眉間に皺の寄っていて、雰囲気が怖い。
顔が嫌味なくらい整っているのもその怖さを助長していた。
「『彼』には妖が見えるんですよ」
彼の言葉に副長は面白そうに口元を歪めるが、それよりも重要な事を聴き漏らした気がする。
彼…………?
いや、私は女です。
そんな男に間違われやすいのだろうか……?
線は細いけど、まぁこんな格好で女には見えないか。
そもそも普通なら刀なんて振らない。
「で、お前は何なんだ? 名前は」
「茅野沙雪」
「女みたいな名前だな」
「それは僕も思いました……って、あれ……?」
だから、女なんだけど。
そう思うけど何も言えない。
否定するのも億劫だし、誤解されてても問題はない。
そう自分の心を落ち着かせた。
の、だか。
「……?茅野ちゃん。君は女の子?」
唐突に言われた言葉に空気が固まった。