妖しの姫と天才剣士



「……そうだけど? 一応」



ここで否定しても意味はない。それに男だと思われて後々言われるのは面倒だ。


と、思って認めたのだけれど。



「そう……だった……のか?」

「お、驚きだ」



三人が揃いも揃って驚いた反応。


自分で言った彼ですら驚いている。


そんなに男に見えるかな。



「ああ、やっぱり⁉︎ 腕の筋肉の付き方とか、柔らかさとかが男と違う」



ああそうですか、とため息をつく。


その瞬間、私は腕を振られていた。


あまりにも急過ぎて私の頭はついていかない。



「そうだったのか……! まさか、そんな女子が一人で旅をしていたとは……!

健気だなぁ!」

「あ……いや……」



健気などと言われる筋合いではない。


そもそも、私は殺しの仕事で食い繋いでいる様な輩なわけで。


真っ当な職を転々としてきたわけでは決してないのだ。


目尻が涙ぐんできた男の人から距離を置きたいが、そうもいかない。


意外と力が強かった。



「近藤さん!」

「そんな事は無いんで! ……あの、手を離して貰えますか?」

「……ああ、ああ、すまない」



やっと離して貰い、ようやく一息ついた。



「で、私はいつ、ここから出して頂けるのでしょうか?」



こんな所に居座り続ける訳にはいかない。



「生きる為には働かなきゃいけないんです」



手の汚し手を探している場所を探さないといけない。



「はぁ? そんな簡単に出せる訳ねぇだろ?

お前が長州の間者かもしれねぇのに」



土方さんと呼ばれた男がそう言った。


は……?


私が長州の間者?


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