妖しの姫と天才剣士
「どうしたの? 茅野ちゃん?」
「……何でもない。早く、行こう」
何でこんなに私、動揺してる?
まさか、私はお梅さんたちの死を……
悲しんで、る?
「ありえない」
だって、私は何人もの人を殺めてきた。
生きるために感情なんて捨てた。
自分が生きるために、たくさん、たくさんの命を奪って。
だから、奪う事に抵抗なんてなかった筈。
なのに何で?
少しの間だけ、ほんの少しだけ接してきた人間をこの手で奪っただけ。
ただそれだけでこんな感情が生まれるなんて…………
「……訳分かんないッ‼︎」
自分の思考が理解できてない。
「茅野ちゃん……⁉︎」
雨の降りしきる中、傘も持たずに私は外に飛び出した。