妖しの姫と天才剣士
困惑
私は総司たちの横をすり抜ける。
「ちょっ! 茅野ちゃ……!」
伸ばされた手を払いのけて思うがままに走った。
理解できない。
どうして、こうなってしまったのかが。
悲しいなんて感情はない。無くていい。
それが一番重要な事の筈だった。
そうじゃないと人斬りなんてやってられない。
自分に言い聞かせて、押し込めていたものが一気に溢れてくる。
怖い、悲しい、苦しい。
そんな黒くて、粘っこい感情が私を飲み込む。
いくら雨に濡れようとそれだけは落ちる気配がしない。