妖しの姫と天才剣士
雨にぬかるんで、泥が跳ね返る。
息が切れて、肺が苦しいけどそれでも走る足を止めなかった。
濡れて、びしょびしょの上着だけじゃなくて下着まで濡れてきたのが分かる。
それでも一度走り出した足は止まってくれない。
ネジ巻きのようにグルグルと。
「どうして……」
零れ出す涙は雨に流させて誤魔化す事もできない。
自分自身もこの涙の意味が理解できなかった。
それと同じように心の膿も全然溢れ落ちてはくれなくて。
「ああああああああっ」