妖しの姫と天才剣士
「あっ……」
叫んでいると急に足がもつれて前のめりに倒れる。
そこでようやく現実に引き戻された気がした。
何処まで来たのか、ここが何処なのか。
月明かりも無く、周りが真っ暗すぎてどこかも分からない。
そんな中、浮かび上がった無数の光。
それは猫の目だ。妖へとなった猫。
現実に引き戻された私は動く事すら億劫で。
全てが暗闇に覆われた気がした。
光さえ、私を見放したようで。
襲われるであろう事は予測してた。
それでも、動こうとはしなかった。
もう、どうでも良くなってしまった。
だって、私が何なのか分からないんだもの。
それならここで殺されても文句は言えないってね。
襲いかかってくる牙は私がかつて手にかけた人たちのものだろうか。
それを受け止める責任が私にはある。