妖しの姫と天才剣士
私の眼窩に迫った一匹の妖。
首を食いちぎろうとした妖の瞳に本能的な恐怖を覚えながら目を開いたままにする。
目を閉じたら負けだ。そんなちっぽけな意地だ。
でも、その妖はズレて真っ二つになりながら落ちていった。
「ふぅ……間に合った」
「……そう……じ?」
そこには刀で妖猫を斬った総司の姿がある。
私を追って……?
「どう?茅野ちゃん? 立てそ?」
私の頰に付いた殆ど流れ落ちた血を総司は指で完全に拭い落とした。
差し伸べられた手を見て私は呆然としながらも一言呟いた。
「どうして、そんな顔してられる……の?」