妖しの姫と天才剣士
「か……んじゃ?」
私は特定の主を持たない。流浪しながら仕事を探しているだけ。
でも、私は首を横に振れない。
だって。
色んな人に雇われて、殺すしすぎたから。
もしかしたら、この人たちの味方を斬ってきたかもしれない。
斬り過ぎて人の顔も、その数すら覚えてない。
覚えているのは肉を切り落とし、命が消失する感覚だけ。
「そんな事いいじゃないかトシ。彼女は困っているんだからここに置いても」
その提案に二人だけじゃなくて、私も驚いた。
「何言ってんだよ⁉︎ 近藤さん! こんな身元も分かんねぇような女を⁉︎」
確かに土方さんの言う通りだ。私は身元を証明なんて出来ない。そもそもここに留まる気はないのだが。
「いいんじゃないですかぁ〜? 彼女、見える体質みたいだし」
「重要でしょ?」と彼は言う。にっこりと、何かを裏に隠した顔で。
何故? そこまでしてもらう言われもない。
だって、私が助けてと頼んだ訳じゃない。
別にあの場所でのたれ死んだ所で何も感じない。
ああ、死ぬんだなぁ〜。ただそれだけ。
やっと、解放されるって思うだけだったのに。