妖しの姫と天才剣士


「いえ、お世話になる気はありませんので」



此処にいた所で意味はない。


だったら、早く生きる仕事を探したい。



「それだけは却下だ。間者の疑いが消えた訳じゃねぇんだぞ?」



威圧的に却下された。


睨みまで効かされたら反論すら出来ないじゃないか。


ああ、この意見は絶対に通らないだろうな。



強行突破……は無理だ。刀がないし、そもそもここにいる全員が相当の手練れだということはわかる。


しばらく悩む様にして下を向いた土方さんは、はあっと息を吐いた。



「茅野沙雪。お前の身柄はしばらく新選組に置いてもらう。

異議は許さねぇからな」

「新選組?」



聞いたことあるようなないような。


まぁ、良いか。ある程度の間食いつなげるなら。

でも問題が一つ。



「……はぁ。でも私、女ですよ? こんな所に女がいる訳……」



剣を女が持つこと自体があり得ないから。


それに、ここ男臭いというか何というか……。



「ああ、当たり前だろ? お前がここにいる間は男装してもらう」



と言ってもいつもと変わんねぇだろ? と土方さんは言う。


そ、そりゃ変わりませんけど……。



「はいはーい! 副長。彼女の事は僕に任せてくれませんか?」



彼が身を乗り出して手を挙げた。



「チッ。じゃあ、ここのルールは総司に聞け。後は、入隊試験だな。

それがねぇとここでは暮らせん」


それだけを言うと土方さんは立ち上がった。



「剣には自信があるんだろう? だったら、それを示して見せろ。茅野」



挑戦的な笑みを浮かべた土方さんに私は無表情を返す。


自信があるか……ねぇ。


自分の身を守る程度は、としか言えないな。


まぁ、そんじゃそこらの坊ちゃんよりもできる自身はありますけど?


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