妖しの姫と天才剣士
「やはり、お前か。一週間の猶予があるんじゃ無かったのか?」
平静なふりをしてそう問いかけた。
内心では相当焦っていて、ぐるぐると頭の中を色んな事が巡る。
腰に差した刀にやった手に力を込める。
「何もしないとは言ってないよ。それにいい加減お前って止めてくれない〜?
僕にはちゃんと由羅って名前があるんだから」
彼––––由羅は音も立てず、私に近づいてくる。
刀に手を掛けた私にですら余裕の表情。
手に暗器を忍ばせている気配は……ないな。
「ちょっと話をして行こうと思ってね。君の話を」
「……は」
っ⁉︎
柚羅は私の一番弱い所を確実に突いてくる。
ニヤリとした顔をする由羅。
由羅は余裕がある顔で童話を語るように穏やかな声音で話す。
「昔々、ある所に一組の親子が居ました。
その家族は裕福では無いものの仲良く過ごしていたのです––––」