交わらない赤い糸
ガチャッ



「…さむっっ」



もうすっかり12月。



コートを着てマフラーを巻いた。



…よし。



帰って小論文書かな…



駅の方へ帰ろうとした時、



「…おい!」



ビクッ



…へ…?



店の前の歩道越しに、平野がおった。



「な、何で…?」


「…お前待ってた」


「…え?…」



待ってた…?



私のことを…?

「仕事中やったから、話しかけたらあかん思って…」


「い、いつから?」


だって、もう22時過ぎやで?



「…1時間ぐらいちゃう?」



そう言った平野の鼻と耳は真っ赤で、意識がボーッとしてるみたいやった。


「あれやて、学生証落としてなかったか?」



…あ…



ゴソゴソ…



「あ、これ?」



バッグから取り出し、それを渡した。



「…ありがとう」



不思議やった。



涙が出そうやった。



「ほな私帰るから…」



カツッ…



「……」


「…ひ、らの…?」



平野が私の腕を掴んだ。



「……」



平野が、巻いてた赤いマフラーを、私の首に巻いた。



「…風邪引くて…」


「…寒そうやん、お前」



いつもみたいに、暴言を吐いてこん平野。



でも笑ってなくて、やけど優しくて…



「…何で泣いてんねん」


「…泣いてへん…」



勘違い、するから。


「…ブスがもっとブスになるで?」



グサッ



やっぱいつもの平野や…泣



「…ひ、らの…?」


「…何?」


「…LINE交換しても、ええかな…?」


「嫌や」



グサッ



…拒否られた。



キュッ



キュッ…



「…あっ…」


「俺、LINE来ても見んからこっち」



曇ったショーウィンドウに、自分のスマホの番号を指で書いた。



「…電話してもええん?」


「嫌ならええけど?」


「いや!!い、いります!いります!」



書かれた番号をスマホの新規登録に登録した。



…優しい。



平野が優しい。



「なぁ?お前って俺の事好きなん?」


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