交わらない赤い糸
ー美央sideー




…何でそんな事聞くん…?



優しくしてくれた後に、その言葉は反則やん。



私の手首を掴んだまま、平野はジッと私を見つめた。



「……好きっ…っ」



堪えてた涙が、頬を伝った。



「…だけど…平野の全部を好きになったんちゃう…」



私は、まだ知らん…。


「私は…まだ平野を何も知らんよ…?」



何が好きなんか、趣味は何なんか、特技は何なんか…。



いつ笑ったり泣いたり怒ったりするんか、何をしたら笑ってくれるんか…。



「…へー。好きなんや?」



カツッ…



「…ほなホテルでも行く?」



でも、やっぱ最低な人。



「…最低っ」


「女なんて信用するかよ」



私、女なんやけど。



「それ、返すんいつでもええから」


「…うん」



最低な奴なのに、やっぱ好きで、優しくされるとどっちがほんまの平野なんか分からんなる。



「何笑ってるん?キモいで?」


「うっさいなぁ…」


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