交わらない赤い糸
ガチャガチャッ



「…よしっと」


「ほな、帰るか」



店の鍵を閉め、私たちは帰り道を歩いた。



雪の降る夜道は少し不気味やった。



カツカツ…



「しっかしお前がアイドルに惚れられるなんてなー」


「…惚れてないって。アイツが私になんか…」


「…美央さ、」


「んー?」



ムギュッ



「…!?」



隣でいきなり夏目くんに頬をつねられた。



「いはひっ(痛いっ)!!」



ジーっと私を見た後、軽くデコピンをされた。



「何番目でもええとか、その場の気分でもええなんて思ってたら幸せなれへんで?」


「…夏目くん…」



とてもイケメンな御言葉戴きました。



「せやから、お前は何も心配せんでええねん」


「…うん」



何となく、夏目くんがモテる理由が分かった。



こりゃ告白されまくりやわ…笑



prrr…



「……?」



平野からの電話やった。




ピッ



「もしもし?」


「出るん遅いわ!1回で出ろ、ドブねずみ」



んあっ!?



電話しといてそれかい。



「そんなん言うんやったら切るで?」


「まて…今から会えるか?」



…え…。



突然の発言に驚いた。



「う、うん。新宿駅やけど…?」


「5分したら着くから、待っとけよ」



ピッ



「おっ、平野君?」


「5分したら、ここ来るって」


「ほぉー。ちゃっかりラブラブやーん、笑」



夏目くんがからかってきます。



…でも、やっぱ平野からの電話は一本一本嬉しかった。



どんな内容でも嬉しかった。



「あ、そういや夏目くっ…」



…へっ?



平野が乗った電車をホームで待つ。



私たちの後ろに、さっきのあの男の人が立っていた。



「な、夏目くっ…」



私が振り返ってその男と目が合った時には、その男は手に持ってたナイフみたいなものを私たちの方へ掲げてた。



「あ、危ないっ!!夏目くんっ!!」



グサッ



プシューッ…



電車が駅に着いた時、微かに女の人の悲鳴が聞こえた。



「きゃあぁぁぁー!!」


「美央っ…おいっ、美央っっ!!」



私の名前を呼びながら身体を揺する夏目くんと、私を見て呆然と立ち尽くす平野が居るのが見えた。



私…刺されたん…?



タッタッ…



…あ…



これ、前もあった…



誰かにお姫様抱っこされるのが夢で、その人が無我夢中になって私を運んでくれるのが、高校からの夢で…。



…ピッピッ…



「美央!!」


「……」


「…救急車待つとかないん?」


「…体が勝手に動いたんや」


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