王子様はハチミツ色の嘘をつく
「わからない……かな。ゴメン、困らせるつもりはなかったんだ。でもさ、もしまだ胸を張って静也のこと“好き”って言えないなら、俺にもチャンスくれないかな」
手を握られたままで、そんなお願いをされて、私はますます戸惑ってしまう。
同時に、“社長のことが好きだから、無理です”とハッキリ断ることができない自分が、すごく嫌な女に思える。
でも、本当にわからないんだもの。
初恋の相手だと思っていたけれど、違った、それなのに気になる人と、自分を想ってくれている、本物の初恋の相手――。
私は、どちらの手をとったらいいんだろうって。
「創希さん、私……」
考える時間が欲しい。そう言おうとしたのに、器用に片手で運転を続ける創希さんは、続きを聞かないままでこんな提案をしてきた。
「美都ちゃん、日曜日は暇? デートしようよ。俺のこともっと知ってもらうためにも」
デ、デート? かなり唐突だけど、創希さんのことをもっと知るにはいい機会なのかな……。でも、このことを社長が知ったら、どう思う……?
色々思いを巡らせる私に、創希さんが明るく言う。
「あ、わかった。静也の反応が気になるんでしょ。着いたら連絡してみよっか」
「……お願い、します」
社長は怒るだろうか。それとも、いつものように冷静な対応だろうか。
マンションに着くまでの間、彼がどんな反応を示すかばかり気になって、創希さんの振ってくる話題は耳を右から左へ通り抜けていた。