王子様はハチミツ色の嘘をつく
……本当に、王子様みたい。
ナチュラルに紳士的な行動がとれる創希さんに感心しながら、けれど頭の中にはどうしても、もうひとりの王子様がちらつく。
社長、今日は、どんな風に過ごしてるだろう。
プライベートの彼のことはほとんど知らないから、予想もつかないや……。
たとえば今日のデートの相手が社長だとしたら、どんな感じなのかな。仕事中よりは、素の彼が見られるかな……。
走り出した車の中でそんなことばかり考えていたら、隣から心配そうな声が掛けられる。
「美都ちゃん、大丈夫? 酔ってない?」
「え? はい! 大丈夫です!」
ずっと黙り込んだままだったから、変な風に思われちゃったかも。
取り繕うように笑顔を浮かべると、創希さんが車内の小物入れに手を伸ばす。そこから飴をふたつ握り、私の膝の上にぽんと置いた。
「食べていいよ。ついでに、俺にも一個ちょうだい?」
「ありがとうございます。ちょっと待って下さいね……」
すぐに包み紙を剥いだ私は、創希さんが手を出すのを待っていた。
でも、一向にそうしてくれない彼が、ちらっとこちらを見てからとんでもないことを言い出す。
「手が離せないから、口に入れて」
えっ! それって、すごく恥ずかしいような。っていうか、飴をくれたときは、片手で運転してたのに……?
「はーやーく」
「わ、わかりました。し、失礼します……!」