王子様はハチミツ色の嘘をつく
さっきまでと違う創希さんの強引さに戸惑っていると、プロジェクターを囲むように並んだカップルシートの内のひとつに、彼がドスンと腰かけた。
遠慮がちにその隣に腰を下ろすと、すぐさま横から伸びてきた逞しい腕が、私の肩を抱いた。
「あ、あの……創希さん?」
椅子が狭いから密着度が高くて、暴れる心臓をなんとかなだめながら問いかける。
すると、創希さんは真面目な顔で私を見つめ、それから耳元でささやいた。
「もう、静也のこと考えるのはおしまい。……一緒に星見よ?」
「……あの……はい」
それ以上何も言えずに、私はドーム状になった天井のスクリーンを眺めた。
ほどなく上映開始の館内放送が流れて、室内が一層暗くなる。
その日上映されたのは、春から夏にかけて夜空を彩るさまざまな星座とそれにまつわる神話に関するもので、とても綺麗だったし話も面白かったけれど、私はどこか上の空だった。
身体が触れ合う距離にいる創希さんのことより、今どこにいて何をしているのかもわからない、社長のことがどうしても気になってしまう。
初恋の相手は、創希さんだった。
それは間違いない事実なんだろうけれど、やっぱり、今私の心が求める、ほんとうの王子様は――。